Statement

山を越えると隣町とは思えないほど気象が変化する場所がある。西日本の「山陰」「山陽」と呼ばれる地域がその関係にあたる。
本展覧会は、山陰、山陽を隔てる中国山地の中山間地域に位置する用瀬(鳥取県)、奈義(岡山県)のオルタナティヴスペースやギャラリーを展示会場として、様々な作家がそれぞれの視点で「陰陽」を表現する美術展となる。

両地域の実際の状況を長年に渡り観察してみると、お互いの違いなどを体感することが出来る。「山陰」「山陽」の表記は端的に両地域の特色を比較表現していると言える。それ故に、「陰陽」を英語に翻訳した「Yin-Yang(イェンヤン)」をそのまま本展覧会のタイトルとした。

だが近年、これらの対比表記(主に山陰)は差別的な負のイメージを含む表現として捉えられている節がある。山陰、山陽に使用されている「陰と陽」の意味は決して善悪で区別するようなものではないし、差別されるようなものでもない。そこに、過剰に問題視する現代社会の病巣を垣間見るような気がしてならない。

本展覧会は気象や疫病、人間の意識が刻々と変化する中で、国道53号線でつながれた用瀬と奈義の展覧会場を往来しながら作品や環境を体験し、穏やかかつ過酷な極地より現在の状況や人間の在り方を再考できる機会としたい。また、国道沿いの独創的で意欲的なクラフト、カフェ、レストランにも立ち寄って、見たり買ったり食べたりしながらシンプルに楽しんで頂ければ幸いである。

Yin-Yang Art Project 実行委員会